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辻田美穂子「カーチャへの旅」

開催終了 2021.07.09

開催日: 2021.7.10(土)ー2021.8.22(日)

 北海道から43km北に位置する島、サハリン。現在はロシアとされているが、1945年までは樺太という地名で日本の一部として存在した、私の祖母の故郷である。樺太各地にあった王子製紙の恵須取工場で働いていた曾祖父の縁あって、戦後、付属の病院で働いていた祖母は「カーチャ」と呼ばれていた。「恵子」という名前はロシア人にとって発音しづらかったらしく、頭文字のKから連想されるロシア名からとられた愛称だった。
 
 幼い頃から聞かされた祖母のおもいで話はところどころロシア語で、日常の回想にはロシア人が登場した。寒い地域ならではの暮らしや風習は、自分の育った環境からは想像もつかないような不思議な世界で、まるでおとぎ話を聞いているようだった。そんなぼんやりとした景色を、年を重ね、自分の目で見てみたいと思うようになった。
 
 2010年、私は62年ぶりに帰郷する祖母と、サハリンへ渡った。荒涼とした土地や、日本時代の遺構をところどころに残すのみとなった景色はうら寂しく、話に聞いていたかつての面影はあまり見られなかったが、それでも祖母はその景色を愛おしそうに、長いあいだ見つめていた。祖母には恵須取の街が確かに見え、私には全く見えなかった。けれどもその視線の先をどうしても見たくて、私の旅がはじまった。

 
 

 
 
 
 
 
 
辻󠄀田 美穂子(つじた・みほこ)
1988年大阪生まれ。ビジュアルアーツ大阪写真学科卒業後、広告代理店にてカメラマンアシスタントとして勤務。
2010年に初めて樺太に行き、2013年より北海道を拠点とし撮影を続けている。
[主な個展]
『フレップの種子』(Gallery Niepce、東京、2011)
『カーチャへの旅』(Kanzan Gallery、東京、2016)
[主なグループ展]
『カーチャへの旅』(AMS写真館、京都、2014)
[アーティスト・イン・レジデンス]
「第35回東川町国際写真フェスティバル」(東川町赤レンガ倉庫、北海道、2019)

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